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〔水行・広瀬川 2〕 広瀬川へ |
【私にとっての広瀬川】 それでは、「私にとっての広瀬川とは」と問いを設定するとどうだろうか。端的にいえば、私は広瀬川を愛しているのだろうか、ということである。これは難しい。微妙である。若干の留保がある。 雨のふる日の川はさみしい |
どこか遠くの川で鮎がよく釣れるらしいという情報を得て、同時に、そこでは投網やコロガシも普通に行われているという情報も一緒に伝えられているとき、少なくとも私だったらそんな川にわざわざ出かけることはない。 忘れられない経験がある。関東や関西ではずっと開催されていたアユの競技大会が、ようやく東北の河川でも開催され始めた頃の話である。東北の中頃に位置し、高速を下りてすぐに行ける広瀬川は、東北一円から参加者が集まるトーナメントの東北地区大会会場に最適ということで、ある大手釣具メーカーからその会社のインストラクターを通して問い合わせがあった。 |
さて、広瀬川はどうなのか。広瀬川の魚資源の処分(漁のルール)の方法を決める権限は、広瀬名取川漁業協同組合に属している。組合員が守るべき行使規則も、一般の釣人が守るべき遊漁規則もこの組合の理事会、総会を通じて決定される。 |
こんなことを書いている私も、実は広瀬名取川漁協のれっきとした古手の正組合員なのである [3]。若い頃には漁協の雑用のお手伝いをしたこともあったのだが、広瀬川から遠ざかっていた時期には、漁協からも離れていた。広瀬川に戻ってきたいま、漁協についても私にできることがありはしないか、手探りの最中である。 |
激しい降雨に耐えられなくなった下水道システムは広瀬川に汚水を吐き出すのだが、その後には大量の雨水が後を追って排出され、かなりの速さで汚水を押し流すことになる。薄黒い(灰色と黒色の微妙な混合)の汚水のあとに黄土色の泥水の増水となって流れていく。汚水の滞在時間はかなり短いのである。それで、実際の影響は、見た目のショックに較べればかなり小さいと考えられるのである。 |
繰り返すが、広瀬川のアユはおいしいのである。これは、私の見知っているアユ釣り師たちに共通している認識だと思う。広瀬川の環境や、環境行政、広瀬川に関係するもろもろには批判に値することがたくさんあるにちがいない。けれども、批判に舞い上がった勢いで、「広瀬川のアユはまずい、食べられない」と口走る人がたまにいて、それはそれで迷惑なのである。 |
2007年に始まったこのような放流の工夫は、標識稚アユによる放流アユの移動距離の調査や宮城県内水面水産試験場に協力しての放流魚と天然遡上魚の分布の調査などに基づいている。広瀬川の浅瀬で、20人ほどの漁協組合員が一斉に背中を丸めて蹲って、稚アユの背びれを一心に切り取っている風景はけっこういじらしくも、ほほえましいものがある。 【さあ、広瀬川へ】 そう思って、広瀬川を遡行することをイメージするのだが、 どうにも続かない。入っていない、見ていない広瀬川が多いのである。それは私の性癖にもよる。ある場所に入って、釣りをしたとすると、天才ならぬ身であれば、必ず、失敗、やり残しが生じる。それを解決しないと気が済まないので、また同じ場所に行くことになる。自ずと場所は限られることになる。 |
そんな私の性癖のため、こんなこともあった。土用過ぎの暑い1日を深さ10~20cmくらいのチャラ瀬のアユを釣りをしたい一心で、山形県寒河江川に出かけたのである。寒河江川の最上川合流点の上流4~5km付近に理想的なチャラ瀬がある。ところが奥羽山地を越えると前夜の雨で、寒河江川は増水に濁りなのであった。チャラ瀬などどこにもないのである。 私は生き残っていて、とうぶん、釣りを続けるのである。
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