対抗マーキングとその応用 (イオ) |
犬の糞すくひて人はまたあるくかかるリフレインを生活といふ
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イオにはマーキングに関してどうしても譲れないことがあるらしい。公園を散歩しているときに多いのだが、木立や繁みの中に強引に入ろうとする。引き止めるのを躊躇するくらい必死なのである。道を歩きながらのときのように、他の犬の匂いを調べるだけ、という雰囲気ではないのだ。 |
張り切って(というほどではないが)始めたのだが、めざましい成果というわけにはいかなかった。意外にウンチが少ないのである。たしかに散歩途中で見かけるウンチもあり、世間では、放置されたウンチについて大いなる注意喚起をする人たちが、公園は犬のウンチだらけかのような印象を与えるべく頑張っていると思っていたのに、これはどうしたことだろう、というくらい少ないのだ。 それでも、私たちの印象は違う。結構な数の人が放置しているのではないか、と思っていた。しかし、冷静に考えてみれば、思い違いをするのは当然である。たとえば、たった一人の人が放置しても、三日たてば同じ付近に犬のウンチが三つも転がっていることになる(私のように他の犬のウンチを拾う人がいなければ、ということだが)。その人が、別の時間帯、別のコ-スを歩けば、そんな場所がもう一つ増える。大雨も降らずに10日もたてば、この公園には3カ所も犬の糞がまとまって放置される場所ができることになる。 |
公園でのウンチ拾いを始めてから、ごく自然に散歩途中で通る町内の路上のウンチも拾うようになる。ところが、平均すると公園よりも拾うウンチが多いのである。たまに、イオのウンチより大きく、結構な大型犬のウンチを拾うこともあるけれど、小さいウンチがほとんどである。黒っぽい、ねっとりした感じの小さなウンチを2,3個拾うという日が続いたが、近所の人にそれは猫のウンチだと教えられた。それで得心がいった。町内の野良猫分布と小さなウンチの分布はほぼ一致していたのである。 公園にもおよそ12,3匹の野良猫がいるが、猫のウンチと思えるものはほとんど見かけない。たぶん、イオが無視していることと、飼い犬と違って野良猫はウンチをする場所を人が通れない薮のなかにでも定めているためではないかと思う。 私の住むところにも町内会があって、会報が定期的に届けられる。そこでは犬の糞が放置されていることがよく話題になっているが、猫のウンチが話題となっているのを見た記憶がない。小型犬のウンチくらいのサイズの猫のウンチが問題ないはずがないと思うのだが、本当のところはよくわからない。 町内会報に書いてあるということは、もちろんなにかの手立てを考える必要があるということだと思う。しかし、拾って歩く経験から、明らかに猫の糞の方が多いのである。事実誤認があっては正しい手立てを考えることは難しいだろうと思うと、私は余計なお節介をしているのではないか、という気になる。正しい事実認識のためには、事実をそのままにしておく方が良いのではないかと思ったりするのである。だからといって、猫の糞だけ拾わないというのは、狭量な差別心のようで、悩ましいのである。 ビニールのふくろにとりて犬の糞もちかえる人はこころいたまし
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