木版画屋からこ
千田佐知子

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木版画屋からこ


個展〜初個展によせて






水彩画序文

旅行にいくたび、さりげなくスケッチブックをひらいている人を見ては、その
姿にあこがれていました。この風景を、私の思い出としてのこせたらどんな
にかステキなことだろうかと。

 風景画をめざしてアトリエに通い始めたはずなのに、練習にと描き始めた
植物たちのおもしろいこと!
 この世の中の人工物は、すべて人間の頭の中で考えられたものが形とな
ってあらわれたものです。近代的なビルも、長い長い橋も、SF映画の近未
来の設定の舞台も、身のまわりにある小さな日常品も。それはそれで人間
の脳のすごさにはおどろきに近い感動をおぼえます。
 一方、空や雲や海、動物や植物、これらは自然とよばれます。
私は植物に接したわけですが、よく観察してみるとその構造にはびっくりす
るような発見がたくさんあります。白い花を構成する白以外の色たち、一見
は単純にみえるかわいらしいチューリップの奥底にひそむ深い色、つくりも
ののような緋色のヒガンバナのつくり。それらの花々が季節をたがえずに咲
くことへのおどろき。
 神様がこれらの自然物のデザインをしたのだとしたら、神様は本当にすご
いデザイナーだと、庭の草木をみては、散歩途中に道端の小さな花をみて
は感動する毎日です。
 絵をかくようになって小さな発見に喜ぶようになった今、「何気なくすぎてい
く毎日に風穴をあけたい」という私の願いは少しずつ叶えられているのかも
しれません。



木版画序文

「今日はなにかくるかな」
郵便やさんがくる時間になると、なんとなくドキドキ。。。
友達が引越していくごとに手紙を書く機会が増えていき、季節感い
っぱいの葉書やレターセットを自分でもつくれたらなあと思うように
なりました。
 そして、出会ったのが木版画。
絵を描くために通いはじめたアトリエの先生が、じつは木版画家で
もあるということは、本当にありがたい偶然でした。
 
 木版画の代表である浮世絵はいまでこそ美術品の扱いですが、
当時は印刷技術として発達しました。外国の美術館でも大切にさ
れて、また、多くの画家に影響をあたえたそれが、木版画の職人
たちに支えられていたのです。
 そういうことで、今は、絵を制作するための木版画という側面よ
り、印刷技術としての木版画に興味を持っています。
生活の中の美術ということにも興味があり、しばらくは、使う目的の
木版画作品を制作し続けていくことになると思います。



出品作品リスト

花の名前(50音順)

タイトル
あさがお

私の夜のおわり、朝を告げて
あざみ

強さと優しさのあいだ
あじさい
今日降る雨に思うこと
あじさい
ひと雨ごとに夏の色
アネモネ
そっと、心の奥に
アネモネ
いつか、あなたに伝えたいこと
おだまき
しのぶれど
かき
光待つ枝
ききょう(矮星)
天つ星を想う
ききょう(矮星)
星をやどして
コスモス
君のために手折りし花
こでまり
ひとひらの風が吹いて
さくらんぼ
六月の香り
さざんか
春を待つころ
さらさどうだん
秋を想う
しゃくやく
夏の前の静かなひととき
すいか
太陽の住む空の下で
せんりょう
あたらしき年のはじめに
チューリップ
春の使者
チューリップ
これから
チューリップ
春のゆくえ
つばき
木に春がおとずれて
どくだみ
春と夏のかけはし
どくだみ
ふと、足もとに
どくだみ
そこに白く咲く花
とるこききょう
紫のワルツ
とるこききょう
君を祈る心の色
とるこききょう
醒めぬ夢に似たる花の色
どんぐり
秋の忘れ物
どんぐり・どうだん
秋、ときめき
のぶどう
瑠璃色のよそおい
のぶどう
宝石をまとって
はぎ
涼風のとおりみち
ばら
手紙の代わりに
ばら
かがやく五月、東の窓辺
ばら(カクテル)
私のベランダの小さな秘密
ばら(ツルバラ)
惑ふ花の夢路
ばら(ミニばら)
小さな思いがいっぱい
ひよどりじょうご
緋色の音符
びわ
毅き初夏の精
ふゆさんご
雪にとけゆく宝石
フリージア
花の香りを風のたよりに
フリージア(秋)
秋色の着がえ
フリージア(秋)
秋色の祝杯をかたむけて
ブルーベリー
ちいさな収穫祭
ブルーベリー&水差
庭の宝石
べにばな
咲き初めしときより後には
べにばな&ランプ
昨日の今頃は
ほおずき
長月廿日あまりのころ
ぼたん
誰がために
ぼたん
馥郁たる紗をかさねて
ゆり
ふたりの午後
りゅうのひげ
道草の途中