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ふるさとの
海よ風よ
空よ雲よ
山よ川よ
星たちよ
トランペットが聞こえますか
菊田郁「悲しみこえて -トランペットを吹く少女―」部分 [1] |
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宮城県北部の山里育ちの私には、海は縁遠く、海辺の町をぜひ歩いて見たいとずっと思っていた。
宮城の町歩きの最初の海辺の町は「女川町」と決めていたら、2月28日のチリ地震による津波で女川町が被害を受けたというニュースを見た。被害の復旧に尽くしている町をぶらぶら散歩するのは、さすがに憚られて先延ばしし、4月7日に出かけたのである。
2011年になって、やっと写真の整理を終えることができた。地図とそれぞれのスポットに対応する写真を並べながら、あれも書こう、これも書こうと考えていたのである。
そんなふうに女川町のことを考えていたころに、3月11日がやって来た。
3日後の3月14日、震災後初めて配達された朝日新聞の裏一面に大きく印刷された女川町の航空写真を見て、声も言葉も失った。女川港上空から、398号線(女川街道)沿いに広がる町を撮していた。私が歩いた道(Photo A から Photo F)も見える。 |
もう、
私ごときが私の散歩のことを書いても、ただの与太話にしかならないだろうと思った。写真だけということにする(写真のキャプションは、震災前に付したものそのままである)。
ただ、
ひとつだけ。
女川町を歩いた日の昼、女川港傍の小さな食堂でラーメンを食べた。とてもおいしかったので、もう一杯頼んだ。長い人生のなかで、同じ店でいちどきにラーメンを2杯食べたのは、後にも先にもこのときが初めてである。
もう一度、あのラーメンを食べることができたら、そんなふうに女川町が復興してくれたら、と(信仰を持たない私でも)祈るばかりである。
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自分の居場所を確保し
対岸から「ガンバレ」と
どうしていえるだろう
菊田郁「序詩 2011・3・11」部分 [2] |
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- 菊田郁「2001・3・11東日本大震災 追悼詩集 沈黙の海」(私家版(*) 20011年) p. 19。
* 連絡先:〒980-0511 宮城県登米市迫町佐沼字的場14-1。
- 同上、 p. 18。
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