水彩画 あいさつ文
[個展によせて]
千田佐知子=木版画屋からこ   つれづれスケッチブック                 個展つれづれごとへもどる


                               


 旅行にいくたび、さりげなくスケッチブックをひらいている人を見ては、その
姿にあこがれていました。この風景を、私の思い出としてのこせたらどんな
にかステキなことだろうかと。

 風景画をめざしてアトリエに通い始めたはずなのに、練習にと描き始めた
植物たちのおもしろいこと!
 この世の中の人工物は、すべて人間の頭の中で考えられたものが形とな
ってあらわれたものです。近代的なビルも、長い長い橋も、SF映画の近未
来の設定の舞台も、身のまわりにある小さな日常品も。それはそれで人間
の脳のすごさにはおどろきに近い感動をおぼえます。
 一方、空や雲や海、動物や植物、これらは自然とよばれます。
私は植物に接したわけですが、よく観察してみるとその構造にはびっくりす
るような発見がたくさんあります。白い花を構成する白以外の色たち、一見
は単純にみえるかわいらしいチューリップの奥底にひそむ深い色、つくりも
ののような緋色のヒガンバナのつくり。それらの花々が季節をたがえずに咲
くことへのおどろき。
 神様がこれらの自然物のデザインをしたのだとしたら、神様は本当にすご
いデザイナーだと、庭の草木をみては、散歩途中に道端の小さな花をみて
は感動する毎日です。
 絵をかくようになって小さな発見に喜ぶようになった今、「何気なくすぎてい
く毎日に風穴をあけたい」という私の願いは少しずつ叶えられているのかも
しれません。

[個展会場にてパネルにして掲示していたものです]

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